このレポートは、診断の結果がどのように届くかをお見せするための見本です。会社名・人名・数字はすべて架空のもので、実在の会社や人物とは関係ありません。
1. 診断の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社サンプル食品 |
| 業種 | 食品製造(惣菜・弁当) |
| 従業員数 | 45名(うち外国人6名) |
| 支援体制 | 登録支援機関に委託 |
| 診断のきっかけ | 入社1年以内の外国人社員が、過去1年で2名退職した |
| 診断のもとにした情報 | 事前ヒアリングフォームの回答、在留カードの写し、雇用契約書、履歴書 |
| 担当 | 在留資格:行政書士 / 労務管理:社会保険労務士 |
今回の対象者
| 役割 | 氏名 | 所属 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 外国人社員 | グエン・ティ・ラン さん | 製造課 | ベトナム、特定技能1号(飲食料品製造業)、入社2024年6月、日本語N3 |
| 上司 | 佐藤 健一 さん | 製造課 課長 | 配属と評価の責任者 |
| 指導役 | 田中 美咲 さん | 製造課 主任 | 日々の作業指導を担当 |
2. 総合評価
| 診断の面 | 結果 | ひとこと |
|---|---|---|
| 在留資格 | ⚠ 要対応 | 在留期限まで約2か月。更新の準備を今すぐ |
| 労務管理 | ⚠ 要改善(12項目中4項目) | 寮費の天引きに労使協定がない点が最優先 |
| 定着環境 | △ 注意 | 指導役とは好相性。上司とは決めるテンポの差に注意 |
過去1年の退職が続いた背景には、契約内容が本人に伝わっていないこと、相談できる場がないことが重なっている可能性があります。一つひとつは小さなことですが、「給与から何かを引かれている理由がわからない」「誰にも聞けない」という不安は、転職を考えるきっかけになりやすいものです。次の章の順に整えることをおすすめします。
3. 在留資格(担当:行政書士)
| 確認したこと | 状況 | 評価 |
|---|---|---|
| 在留カードの有効性 | 入社時に出入国在留管理庁のサイトで確認済み | 問題なし |
| 在留期限 | 2027年1月15日(あと約2か月) | 要対応 |
| 期限の管理 | 担当者の手帳で管理。一覧表はない | 要改善 |
| 外国人雇用状況の届出 | 入社時に提出済み | 問題なし |
| 就労している業務 | 惣菜の盛り付け、計量、包装 | 在留資格の範囲内 |
指摘
- 在留期間の更新申請をすぐに始めてください。 更新は期限の3か月前から申請できます。特定技能は提出書類が多く、登録支援機関の書類も必要になるため、準備に1か月ほどかかることがあります。
- 期限は会社で一覧にして管理しましょう。 外国人社員6名分の在留期限を一覧表にし、期限の4か月前に担当者と上司の両方へ知らせが届くようにしておくと、担当者が休んでいても更新漏れを防げます。
4. 労務管理(担当:社会保険労務士)
事前ヒアリングの12項目について、ご回答と、書類を拝見した結果です。
| No | 項目 | ご回答 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 1 | 雇用契約書・労働条件通知書を本人が理解できる言語で交付 | いいえ | 要改善 |
| 2 | 報酬が同等業務の日本人と同等以上 | はい | 問題なし |
| 3 | 社会保険・雇用保険に加入 | はい | 問題なし |
| 4 | 外国人雇用状況の届出を提出 | はい | 問題なし |
| 5 | 在留カードの有効性を確認 | はい | 問題なし |
| 6 | 在留期限を一覧で管理 | いいえ | 要改善 |
| 7 | 就業規則をわかる形で周知 | わからない | 要確認 |
| 8 | 36協定を締結・届出 | はい | 問題なし |
| 9 | 年次有給休暇の付与・管理 | はい | 問題なし |
| 10 | 寮費・食費控除の労使協定 | いいえ | 要改善 |
| 11 | 健康診断の実施 | はい | 問題なし |
| 12 | 定期面談など相談の場 | いいえ | 要改善 |
指摘
- 寮費の給与からの天引き(No.10): 税金や社会保険料以外を給与から引くには、労働者の過半数代表などとの労使協定が必要です(労働基準法24条)。協定がないまま引くと、賃金の一部を払っていない扱いになります。今回いちばん急いで整えたい点です。
- 契約内容の母国語での説明(No.1): 特定技能では、雇用条件を本人が十分に理解できる言語で示すことが求められています。ベトナム語を併記した労働条件通知書を改めて交付し、受け取った記録を残しましょう。厚生労働省の多言語モデルを使えます。
- 就業規則の周知(No.7): 休憩、遅刻・欠勤の連絡方法、禁止事項など、日々の働き方に関わる部分だけでも、やさしい日本語か母国語で伝えることをおすすめします。
- 相談の場(No.12): 登録支援機関の定期面談とは別に、社内で月に一度、15分程度の面談をおすすめします。定着環境の章で、誰が担当するとよいかを書いています。
5. 定着環境
独自のノウハウで、ランさんと上司・指導役のお二人それぞれとの「2人の関係性」を見ました。履歴書に書かれた経歴もあわせて参考にしています。
ランさんはどんな人か
- 新しいことに前向きで、決めるのが速い。やることがはっきりしていると力を発揮する
- 反対に、目標があいまいだと迷いやすい。方向を示してくれる相談役がいると安心する
- チームで同じゴールを目指す一体感が、働く支えになる
上司・佐藤課長との関係
特徴:かみ合えば心強いが、すれ違いが表に出にくい組み合わせ
佐藤課長は、自分のペースを大切にし、納得できるまで考えてから決める方です。すぐに動きたいランさんとは、決めるテンポが大きく違います。
この2人は、うまく回っているときは「課長が方向を決め、ランさんがすぐに動く」という良い形になります。一方で、一度こじれると、まわりからは原因が見えにくい関係でもあります。ランさんが「返事が来ない」「任されていない」と感じ、課長は「せっかちだ」と感じる。どちらも口には出さないまま距離が開いていく、というすれ違いに注意が必要です。
関わり方のアドバイス(佐藤課長へ)
- 「考えておく」で終わらせず、答えを出す日を伝える。すぐに結論が出ないときも、「金曜に返事する」と一言あるだけで、ランさんの不安は大きく減ります
- 仕事を頼むときは、何をどこまでやればよいか、ゴールを先に伝える。やり方はある程度任せたほうが、ランさんは伸びます
- 評価や注意は、まとめてではなく、その場で短く伝える
指導役・田中主任との関係
特徴:目指すものが似ていて、言いたいことが伝わりやすい組み合わせ
田中主任も、自分の可能性を試したい、仲間と一緒に目標を達成したい、という思いが強い方です。ランさんと価値観が近く、言葉の壁があっても「何を大事にしているか」は伝わりやすい関係です。指導役としては、今の配置が合っています。
気をつけたいのは、仕事の「完成度」と「礼儀」です。田中主任は、仕上がりの正確さや、上下関係・マナーを大切にします。速さを重んじるランさんが細かい手順を飛ばしたり、日本の職場の暗黙のルールを知らずに動いたりすると、主任が厳しく感じてしまうことがあります。
関わり方のアドバイス(田中主任へ)
- 「速さ」と「正確さ」のどちらを優先する作業かを、工程ごとにはっきり伝える(計量は正確さ、盛り付けは速さ、など)
- 職場のマナーは「なぜそうするのか」も一緒に説明する。理由がわかると、ランさんは素直に取り入れます
- ランさんの「もっとやってみたい」を拾い、次に試せる目標(技能試験、新しい工程など)を一緒に決める
社内の相談役について
労務管理の章でおすすめした月一度の面談は、田中主任が担当し、佐藤課長は結果を聞く形をおすすめします。ランさんにとって話しやすい相手が窓口になり、課長とのすれ違いにも早く気づけます。
この章の内容は、関わり方を考えるための参考情報です。採用選考や評価・処遇を決める根拠には使いません。
6. 優先して取り組むこと
| 優先度 | やること | 担当 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | ランさんの在留期間更新申請の準備を始める | 総務担当・登録支援機関(行政書士が支援) | 2週間以内に着手 |
| 2 | 寮費・食費の控除について労使協定を結ぶ | 総務担当(社労士が支援) | 1か月以内 |
| 3 | ベトナム語を併記した労働条件通知書を渡し直す | 総務担当 | 1か月以内 |
| 4 | 田中主任による月一度の面談を始める | 田中主任・佐藤課長 | 来月から |
| 5 | 外国人社員6名の在留期限を一覧にして共有する | 総務担当 | 1か月以内 |
| 6 | 就業規則のうち日々の働き方に関わる部分を、やさしい日本語でまとめる | 総務担当(社労士が支援) | 3か月以内 |
7. おわりに
今回の診断で見えた課題は、どれも今から整えられるものです。特に在留期間の更新と寮費の労使協定は、早く手をつけるほど安心です。
3か月後に、取り組みの進み具合と、ランさんの様子をあらためて確認させてください。新しい外国人社員を迎えるときや、配属を変えるときも、お気軽にご相談ください。
実施:一般社団法人外国人材雇用マネジメント協会(提携:社会保険労務士・行政書士)